第六部 三 不都合

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 それにしてもこんな年明けからお呼び出しなんて、実華ちゃんは何か緊急の相談だろうか。  実は、実華ちゃんにはまだ亮弥くんのことを報告していない。話してしまうといろいろ危険過ぎることに気づいたからだ。  その話題に触れられなければいいけどと思いながら、業務終了後に実華ちゃんと連絡を取った。  実華ちゃんとのつき合いは、周囲には内密だ。今思うと、この秘密を持ってしまったこと自体が良くなかった気もするのだけど、とにかく、共通の知人である愛美ちゃんにも、私の元カレで実華ちゃんの夫である西山正樹にも、その他公私ともに、私達が友人関係だということは一切誰にも知られていないのだ。  だからもちろん会社の近くで待ち合わせるのは避けなければならない。  私は一人で、普段利用している溜池山王(ためいけさんのう)駅から一駅の、虎ノ門(とらのもん)にあるカフェへと向かった。   「いらっしゃいませー」  店内に入ると、実華ちゃんが奥の席に座ってスマホをいじっているのが見えた。  レジでオーダーを済ませ、コーヒーを持ってその席に行くと、 「お久しぶりです!」  と実華ちゃんは明るい表情で歓迎してくれた。どうやら深刻に悩んでいる雰囲気はなさそうなのがわかって、私はほっとした。 「どうしたの急に。何かあった?」  私はコートを脱いで、向かいの席に腰を下ろした。 「何かも何もないですよー。優子さん、私に隠してることあるでしょう」 「えっ……」 「カーレーシ! できたんでしょ?」  実華ちゃんは、不服そうな顔で私の目を覗き込んだ。  まさか話題を避けるどころか、そのことで呼び出されたとは。 「あー……、えっと、……もしかして、愛美ちゃん?」 「そうですよ!!」  テーブルをピシッと叩いた実華ちゃんに、私はちょっと身構えた。
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