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「酷すぎにも程があるな」
あまりの偏見に呆れ返ると共に、ちょっと笑ってしまった。
「違うんですか?」
「全然違うよ~。まず、顔だけが取り柄じゃないし。素直で真っ直ぐで、本当にいい子なんだから。愛美ちゃんもそこは認めてたし。漫画は好きみたいだけど、普通にデートでいろんなとこ行くし、漫画だけしか興味ないわけじゃないよ。あとオタク感は一切ない」
「えー。話と違う。仕事は? まさか無職じゃないでしょうね? 優子さんが養ってるんじゃないでしょうね!?」
「なんでよ。ウェブコンサルの仕事してるよ」
「え~。じゃあ、顔よし、性格よし、収入よしで、優良物件じゃないですか。え、いくつ? 二十代って言ってましたよね」
「今二七かな? もうすぐ誕生日来るけど」
「めっちゃ良いじゃないですか。さすが優子さん……!」
「良すぎるのよ、むしろ。何も私みたいなおばちゃんじゃなくても良さそうなのに……。実華ちゃん、その子と会ったらほんとビックリするよ。私とは不釣り合い過ぎて……」
「何言ってるんですか! だって向こうから言い寄られたんでしたよね!? なら自信持たなきゃ!」
「そうねぇ……」
そうありたいと思ってはいる。でも、亮弥くんと二人でいる時は気にならなくても、第三者が絡むと、どう見られるか気になってしまうものなのだ。
「でも、そっか~。愛美の弟だったんだ。それならまあ、しょーがないか。良かった、相手が誰かわかって」
ご機嫌になった実華ちゃんを見て、私はようやく安心してコーヒーを飲んだ。すると、実華ちゃんもつられてカップを口につけた。
「でも、それならどうして私に言えなかったんですか?」
「それなのよ」
誤解が解けてすっかり油断してしまっていたことに気づく。よかった、質問してもらえて。相手が愛美ちゃんの弟だとバレてしまった以上、そこをキチンと話しておかないといけないのだ。
「あのね、実華ちゃん」
「なんですか?」
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