第六部 三 不都合

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「実華ちゃん、私に彼氏ができたら紹介してって言ってたじゃない? 相手が社内の人ならまだ良かったんだけど、愛美ちゃんの弟となると、会わせられないのよ」 「なんでですか? むしろ愛美も含めて皆で会えばいいじゃないですか」 「そしたらどうなると思う?」 「え?」 「愛美ちゃん、大した接点もない実華ちゃんと私がどうしてそんなに仲良しなんだろう、って思うでしょ」 「あっ……」 「そういうこと。実華ちゃんとのことが、愛美ちゃんや弟さんに知られると困るのよ。私の元カレが社内にいる上に奥さんと仲良しだなんて知ったら、彼氏としてはいい気はしないだろうし、最悪正樹にも実華ちゃんと私の交流がバレちゃうでしょ。そしたら正樹と実華ちゃんもギクシャクしちゃうと思うし……」 「そうですね……」  実華ちゃんは目を逸らしながら、ちょっと口元を緩ませた。なんか変な反応だなと思っていると、 「いや、実はですね……。正樹は、私が優子さんと仲良しなの、もう知ってるんです……」 「ええー!? 言っちゃったの?」 「だって、私としては、優子さんが正樹と会ったり話したりしないでくれればそれで良かったから、もう、言っちゃったほうが気が楽だと思って。正樹にも優子さんとは仕事以外の接触禁止って言ってあるし」  まあ、そう言われると、そうかもしれない。黙ってて二人が気まずくなるよりは、話して了承し合えるならその方が当然いいわけだし。  正樹が知ったことで私に影響があるとしたら、何でもペラペラ喋ってると思われないかくらいだけど、まあ、正樹の不利益になることは言ってないし、それをどう思おうと彼の自由だ。交流を止められてないということは、大丈夫なのだろう。多分。 「でも、愛美とか他の人には何も言ってませんよ! 正樹が優子さんの元カレって社内に知れたら、私もちょっと嫌ですし……」 「それは、そうだよね……。まあいいよ、正樹のことは。実華ちゃん達の間で問題ないなら私は構わないし。ただね、あの子のことは傷つけたくないから……」
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