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第六部 一 新しい関係
亮弥くんとのおつき合いは、ことのほか順調だった。
季節は秋から冬に向かい、紅葉した木々の葉は落ちて地面を彩り、やがて枯れ果て、街には寒々しい枝だけが残されていた。けれど、私達の関係はそんな風景とはリンクすることなく、いつもポカポカと温かだった。
熱烈でもなければ、遠慮がちでもない、ちょうどいい温度感で、穏やかに心を通わせ合っていた。
そんなだから、クリスマスは平日だったというのになんとなく一緒に過ごし、なんとなく年越しも一緒に過ごし、大晦日から三日が過ぎた今日、ようやくそれぞれに時間を過ごすことになった。
私は人とベッタリと過ごすのが苦手だ。
過去の恋愛では、三日も続けて一緒にいたら息が詰まって笑えなくなった。何か明確なきっかけがあるのではなく、不機嫌なわけでもないのに、なぜか笑顔が消えてしまうのだ。
でも大晦日からこっち、私はずっとにこにこしていた。楽しかったし、安心できた。亮弥くんの笑顔があって、声があって、温もりが手に触れることに、幸せを感じていた。
私が年を重ねて丸くなったからなのか、相手が亮弥くんだからなのかは、わからない。ただ、自然体の自分のままで側に居られる相手を見つけたことだけは、確かだった。
この気持ちが、いつまで――。
私は考える。
いつまで続くだろう。
いつ、終わるだろう。
そして亮弥くんの気持ちはいつ終わるだろう。
いつか終わりが来る。人の心は変わる。
つき合い始めで、きっと今が一番幸せな時なのに、一番舞い上がれる時なのに、私は何も知らなかった若い頃のように手放しで幸せに溺れることはできず、いつも心の底で、いつかは別れを受け入れるという覚悟をしていた。
年末年始の三日間ずっと隣にいた亮弥くんがいなくなった部屋は、静かになって、温度が下がって、慣れた環境が戻って私はほっと息をついた。
けど、少しだけ、胸がキュウッと軋んでいるのを感じていた。
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