第六部 三 不都合

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「うんうん、わかりますよ!」 「もちろん、ずっと黙ってるのがいいことなのかっていう疑問はあるんだけど……、とりあえず今はまだ、秘密にしておきたいの」 「わかりました。誰にも言いません! ま、愛美の弟なら結婚式とかで見られるかもしれないし! でも、もし彼氏に話したくなったら言ってくださいね。その時は私も、愛美にくらいはバレる覚悟しますから」 「うん、わかった。ありがとう」 「イヤ、こっちこそ、勝手に正樹に話してスミマセンでした……」 「いいよ、もう。むしろちょっと気が楽になったかも」 「ほんとですか?」 「うん」  そう言うと、実華ちゃんは安心したように笑顔を見せた。 「実華ちゃんのほうは、変わりない?」 「そうですね、ふふ、実は……」 「え、どうしたの?」  実華ちゃんははにかみながら、少し考え込むように視線を落とした。 「実は、まだわからないんですけど、もしかしたら妊娠したかも……」 「えっ! ほんと!?」 「まだ、生理が遅れてるだけで、検査薬も試してないんですけど……、今週末まで来なかったら、検査薬買ってみようと思って」 「すごい、良かったね……!」 「まだわかんないですけどね、そうだといいなと思います」 「うん、そうだね。正樹にはもう言ったの?」 「ぬか喜びさせてもいけないし、検査薬で陽性が出たら、と思ってるんですけど……」 「そっか、それがいいかもね。わかったらまた教えて」 「はい!」  実華ちゃんの、妙に慎ましやかな話し方を見て、幸せなんだなと思った。子供が出来たかもしれない、その気持ちが、実華ちゃんをこんなに幸せそうな顔にするんだな。  正樹と実華ちゃんが、無事にパパとママになれますように、と私は心の中でそっと祈った。  
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