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実華ちゃんと別れてから、泊さんに電話して向こうの様子を聞いてみた。すると、秘書の子達が早く終わったので、もう居酒屋で始めているとのことだった。
私は再び地下鉄に乗って赤坂見附まで移動し、皆が飲んでいる居酒屋へと向かった。
ガヤガヤと騒がしい店内に入り、泊さんと秘書達の姿を探しながら通路を進んでいたら、聞き慣れた声が耳に入ったので居場所は容易にわかった。
座敷を覗くと、泊さんが言っていた“三宅っち”の姿はなく、変わりに若い男の子が三人、秘書の女の子五人を相手にずいぶん話を盛り上げているように見えたが、一番盛り上がってるのは泊さんだった。
「おおー、片瀬ちゃん!」
「あっ、優子さん!」
パチパチと、謎の拍手で迎えられた。
男の子達は初めて見る顔だが、相手は私を知っているらしく、「うわー」「マジ? マジ?」と目を輝かせていた。これはよくある反応で、私はとりあえずニコニコ笑って挨拶をした。
「ごめんね、途中で邪魔して。どうぞ、続けて。このおじさんは私が引き受けるから」
「オジサンって!! 片瀬ちゃん!!」
「室長ほんとうるさくてぇ。私達どんどん声張らなきゃいけなくなって、大変なんです!」
「泊さん、ダメでしょ若い子達の邪魔しちゃ」
「片瀬さんは若い子側ですよね」
男の子の一人がすかさずお世辞を挟んだ。
「お前! 誘ってやった恩を忘れて俺だけ除け者か!」
泊さんは既にできあがっているように見える。
「はいはい、もう黙ってください。ほら、焼き鳥でも食べて。泊さんの好きなぼんじりありますよ」
「食べる!」
取り皿に焼き鳥を置いてあげたら、泊さんは静かになった。そっと目配せすると、“ありがとうございます~”と、副社長秘書の真鍋さんが困った顔で両手を合わせた。
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