990人が本棚に入れています
本棚に追加
泊さんにそれができていないわけでは決してない。私以上にできている部分も、当然ながら多くある。でも、肝心なところで詰めが甘くて、そのせいで、私がいなかったらどうなってたんだろう、とヒヤヒヤすることも多い。
「彼らはどこの人達ですか?」
「スリーピースが三宅の部下の浅井で、その隣が同じく小沢。眼鏡が営業事務の笹川」
なんと、愛美ちゃんと実華ちゃんの後輩達だ。これはちょっと距離を置いといたほうが無難そうだ。
私はできるだけ話に入らないように、泊さんを捕まえてちまちまお酒を飲みながらやり過ごした。
新年会は九時頃にお開きとなった。
店の外に出ると若者達は連絡先を交換していて、それが済むと女の子達だけ一足先に帰って行った。
私は泊さんが会計を済ませてくるのを外で待っていた。すると、営業の男の子達が声をかけてきた。
「片瀬さん、この後もう一件行きませんか?」
「こんな機会めったに無いし、片瀬さんとも話してみたくて」
「……えっと」
どうしよう。何て言って断ろう。
この子達、亮弥くんと同じくらいの年だろうか。こんな年上のくせに警戒して断るのも自意識過剰だし、かといって一人でほいほいついて行くわけにもいかない。泊さんが一緒に来るなら……。
「おい、片瀬ちゃんはダメよ」
スマホを操作しながらヨタヨタと店から出て来た泊さんが、こちらの空気を悟って牽制した。
「片瀬ちゃんと俺はこれから社長と合流するから」
そう言ってスマホを耳に当てる。
「あっ、そうなんですか? じゃ仕方ないか……」
「それじゃ、片瀬さん、またの機会に!」
「ごめんなさいね」
「泊さん、おつかれっしたー!」
「おつかれっす!」
「おおー、またな! あ、社長? 今どこですか?」
最初のコメントを投稿しよう!