第六部 四 優子の部屋

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 優子さんの部屋は、一言で言うととても整理されている。必要なものが必要な場所にちゃんとあって、まごつくことがない。特にキッチンの使い勝手は見事だ。  しかも、神経質なほどキッチリと整頓されているのではなく、適度に隙があり、それでいて整然としている。決して人を――おそらく優子さん自身も含めて、精神的に圧迫しない範囲で片づいていて心地いいという、この絶妙なバランス感覚がすごい。  部屋自体はいわゆる都心の1Kの狭さだが、工夫して空間をうまく使っているので、物が詰め込まれている印象もない。  ベッドは収納付きで、他に余分な衣装ケースはない。ベッド下の収納とクローゼットで事足りているらしい。そのため見た目もスタイリッシュだ。ちなみにベッドは高さがあるので、二人で寝る時は落ちないように優子さんにピッタリくっついて寝る。  ベッドの向かい側にはデスクトップのPCを置いたデスクとチェアーがある。テレビはPCで見るので、優子さんは普段、ベッドをソファ代わりにも使っている。二人でのんびりくつろぎたい時も一緒にベッドに座る。壁にクッションを挟んでもたれ、脚を投げ出して座る感じで、もちろんそのままいちゃつくこともでき……これは余計だった。  デスクの右側には小さな折り畳み式のテーブルと椅子があって、そこが飲食スペースになっている。  もっとも、優子さん一人の時はPCデスクの方に座るらしいけど、俺と二人で食べられるようにテーブルと椅子を買い足してくれたのだ。ウッド調でかわいくて、俺も気に入っている。  折り畳みテーブルの奥の壁際には、本棚とコミックス棚があり、優子さんの趣味の本がずらりと並んでいる。  コミックスはほぼ全部俺も持っているものばかりで、優子さんのセンスは容易に把握できた。最近の作品で知らない漫画があったので見せてもらったら、なるほど、スタイリッシュな癒し系で優子さんらしい、と納得して、俺も早速電子書籍で買った。
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