第六部 一 新しい関係

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 ところで、実は内心ずっと心配していた、亮弥くんと体の関係を持てるのか? という問題は、案外難なくクリアできた。  出会った時はまだ幼さの残る未成年で、とても恋愛対象には考えられなくて、大人になった亮弥くんに再会してからも全くそういう関係になることをイメージできなかった。亮弥くんの気持ちを受け入れた当初も、どう意識を切り替えていけばいいのかわからないままだった。  けれど不思議なもので、一度手を繋いだら手を繋ぐのが当たり前になったし、キスをしたらもう触れ合う抵抗感は全くなくなった。私達は物理的にも不思議なほどするすると馴染んだ。  なんだかんだ、見せる相手もいないというのにこの年までほぼ体型をキープして来たことが、報われて良かったなという、ちょっとズレた感想を持てたのは、亮弥くんが「きれい、すごくきれい」と真珠でも見るような目で言ってくれたからだ。  当の亮弥くんは、そんな時でもとにかく顔が美しくて、いわゆるイケメンに対して恋愛的な興味を持つことなく生きてきた私には刺激が強すぎて、明かりを落とした部屋で亮弥くんの繊細に揺れる瞳に捕らわれるたび、体が溶けそうになる。  ふた月近く経つ今も全く慣れない。  どう考えてもイケメンは反則だ。  もうひとつ私達の間で変わったのは、亮弥くんの言葉づかい。  これも不思議なもので、一度肌を触れ合うと亮弥くんの丁寧語に妙な違和感が漂うようになった。亮弥くんも同じように感じていたらしく、今ではほぼタメ口で話している。友人から恋人に移行すると、年の差による距離感なんて案外簡単に消えてくものらしい。  つくづく、もっと早くこうしていれば良かったと思うけど、こうなるにはやっぱり相応の時間が必要だったことも事実で、結局のところ、すべての物事は一番いいタイミングで起こっているのだと、私は一人納得していたのだった。  
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