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父親は二つ年下で、会社勤め。穏やかでお茶目な面もある、毒気のない人だ。この人が母親と対立しないからこそ、ウチは円満に回っている。
青山家の主導権は圧倒的に母親にあり、父親はほぼ同調しながら場を茶化す役割だ。もっと父親らしく威厳も見せて欲しいと思いながら育ったが、今となってはこの人の包容力には頭が下がる思いだ。
顔もほぼ中身どおりで、母親はキツめ、父親は優しい顔をしている。母親の顔を父親の顔で二割薄めたのが俺、五割薄めたのが姉ちゃんという感じだ。
「お昼ごはん食べるんでしょ?」
「あー、うん。二人とも今から?」
俺はコートを脱いで椅子に座った。
「朝がゆっくりだったから、そろそろ準備しようかなと思ってたとこ。まだお節の残りもあるのよ」
「そんじゃそれ食べる」
「お雑煮もできるけど」
「食べる」
母親はキッチンに行ってエプロンをつけた。昔からバリバリ働いているのに、ごはんはキチンと作ってくれる人だ。
「姉ちゃん来たの?」
父親に聞くと、
「うん、隆也くんとね」
「そうだろうね」
「もう会うの何度目かだけど、やっぱり緊張するね。気を遣うというか。今年は向こうのご両親と年賀状もやり取りしてね。なんか、慣れないよね~そういうの」
眉を下げて笑う父親を見て、そんなものかと思った。人づき合いは会社で慣れている人だと思っていたけど、やっぱり娘の彼氏となると違うものなのかな。
「大変だね」
「亮弥はまだいいからね、結婚とか。お父さん頭が追いつかないから」
「まだそんな段階じゃないよ」
「どんな段階なのよ」
キッチンから母親がすかさず声を張る。
「まだつき合い始めたばっかり!」
「一緒に年越すくらいなのに?」
「別に、年くらい越すよ」
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