ロクサーヌ(その1)

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ロクサーヌ(その1)

今は西暦722年、唐歴では開元10年。私はロクサーヌ、705年生まれの17才だ。私の生まれたサマルカンドは大きく立派な都だった。半世紀以上に渡ってアラブの攻撃を受け住民も虐殺されてきたが、それでも誇りを失わず今も戦っている。しかし、それも最後かもしれない。ホラサーン地方の新しいアラブ人総督アル・ハラシーは苛烈な圧政で知られている。サマルカンドの王様も逃げ出してしまった。私たちはペンジケントの領主デワシュティチ様に従いフェルガナに逃げるところだ。私たち14000人はホージェントで虐殺され、さらにムグ山のアバルガル城で降伏したにもかかわらず約束を破られ残った100家族も殺された。このことが世に知られたのは1932年にムグ山から当時の古文書が発見されたからだ。私にはこの未来の破滅が分かっている。問題は、今この危機を私がどう切り抜け生き延びるかだ。
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