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それから少し間は空いたけれど、男性はまた店にやって来た。 三本目の傘の注文をしに。 そして 私の手には、完成した三本目の傘がある。 傘の骨は16本。しなやかでどこか品を感じる雰囲気で、色は今の季節に美しく咲き誇る藤と同じ、柔らかな藤色。内側は白色で、雨に濡れると、外側にも内側にも藤の花が浮かび上がる。 細く長い柄の部分は、まるで水面に藤の花を映したよう。 傘の縁には藤棚から花が垂れ下がるような、藤色と白色のレースがあしらわれている。 とても美しい傘だ。 今までの二本の傘も、美しい傘だと思ったが、これはそれとは比べ物にならないくらい美しい。 まるで生き写しだ。 あの男性はきっとまた、頬擦りをして喜ぶことだろう。 そう思って引き取りに来る日を待っていたのに、あの男性はこの傘を取りに来る事はなく、そして二度と店を訪れる事はなかった。 いや、正確に言えば、来る事が出来なくなってしまったのだ。 何故なら、男性は別の形で店を訪れる事になったから……
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