とある雨の日の、奇妙な話

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とある雨の日の、奇妙な話

「あ」と間抜けな声と共に空を仰いだ。 昨日発売した雑誌をコンビニで立ち読みしていた。買うお金はないので仕方ない。一冊読み終わり、90円の天然水を一本買って外へ出たら……。 「……雨じゃん」 天気予報に嘘をつかれた気分になり、折りたたみ傘を持っていないか確認するため鞄に手を突っ込むも、折りたたみ傘は不在だった。家に置いてきたようだ。 「………はぁ」 濡れて帰るか、やむのを待つか……そう悩んでいた時だった。 「……あの、良かったらこれ」 そう言われて顔をあげれば、見慣れた制服を着た男子生徒。 「え……っと」 「どこのクラスだっけ?」と口にしようとした私の手に、彼は半ば傘を押し付けて、土砂降り一歩手前の雨の中へ消えて行った。  後日、傘を返したくて彼を探すも彼は見つからなかった。 友達は口を揃えて「うちの男子じゃないんじゃない?」「幽霊だよ。あーくわばらくわばら」と言っていた。 ……とある雨の日の、奇妙な話でした。
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