「傘の小人」

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「傘の小人」

数え切れないほどこの世界にある傘には、小人(こびと)が住んでいる。 と、言い出したのは私のお祖父ちゃんだった。 彼は生前、たくさんのお伽噺を私にしてくれた。その全ては彼自身が考えたもの。かわいくて、優しくあたたかい彼のお伽噺たち。 その中でも特に私のお気に入りは、「傘の小人」という話だった。 傘には一本ずつ違う小人が住んでいて、持ち主の為に毎日手入れを欠かさない。 だから持ち主たちはどんな大雨でも濡れ鼠になることはないし、柄物の傘は鮮やかに開いてどんよりとした持ち主の気分を明るくする。 ただ、機嫌を損ねてしまうと彼らは傘からいなくなってしまう。傘に穴が空いたり、骨組みが曲がったり折れるのはそのせいなの。 いなくなったはずの小人たちは、コウモリの翼の下に隠れていたり、森の動物たちの共同傘となっている大きな樹に居候してたりするんだって。 そこでじっと新しい傘が生まれるのを待っているんだよ。 私が中学生の時、ぜったいあの傘小人が住んでる!っていうような傘を持っている人がいたんだけどね。 これはその話。 傘の小人がいるかどうか信じるのはあなた次第。
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