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雨音×雑音
「今日は午後から雨かよ」「俺傘持ってきてないよ」目の前の生徒が話してる。
空はうっすら灰色で少し湿っぽい感じもした。
「午後から雨なら今日は練習中止かな?今時さぁ~屋内練習場無いなんて。体育館は剣道部が使うし・・・」智治は少し不満そうな顔でそう言った。
「確かに試合近いし、練習はしときたいよな~まぁ戦士の休息ってことで!中止になったら家に来るか?」
「行く行く!」智治は明らかに尻尾を振っていた。
おそらく晩飯狙いだな。
「じゃあ決まり!晩飯も食ってけよ」僕がそう言うと不満そうな顔はもうすぐに消えていた。
学校につくと授業がいつも通り始まり10時を回っていた、退屈な授業を受けながら10時55分頃になると一斉にみんなの頭上に砂時計が現れた。ふと目をグラウンドに移すと体育の授業を受けているD組が見えた。その瞬間目を疑った。
明らかに一人だけ色が違う、赤い砂時計。しかもそれは智治・・・
砂時計の砂は他より早く落ちている。すぐに砂時計は見えなくなったが、あのペースだと夕方過ぎには砂が落ちる。
おかしい!今朝は遅刻するかもと時計に目をやった、8時40分頃の時には智治の砂時計は白かった。砂の落ち方も普通。何なんだ?
次に確認できるのは12時丁度昼休みの時。
僕はいてもたってもいられず4時限目が始まる前に智治を探し、休み時間に寝ている智治を見つけた。
「おい!智治!」慌てて智治に駆け寄ると、びっくりした様子で
「何だよ?突然?」眠そうな顔で僕の顔を見上げた。
「体大丈夫か?お前具合とか悪くないか?」質問をする僕に智治も
「は?至って元気だけど?眠いだけだから」といつも通りの智治
おかしい!確かにあの砂時計が見えた!でもこんな話をしても・・・
仕方ない12時にもう一度確かめるしかない!
もう4時限目が始まる・・・時刻は11時その瞬間左目に強い痛みが・・・
慌てて僕は智治に「昼飯食う前にちょっと教室来てくれ!」これだけ伝えて教室へと戻った。
時間は11時5分痛みは治まることがなく鈍い鈍痛が。なんだ?この痛みは?今まで変な違和感はあったが今回は何が?
僕は痛みに耐えながら、授業を受け漸く授業が終了した。昼飯の時間だ・・そろそろ智治が教室にくる。
しかし待てど暮らせど姿を現さない。
僕はD組まで走り智治の様子を見に行った。時刻は11時54分
しかし教室に智治の姿は見えない。
あいつ!こんな時に!!そばの男子トイレで智治の笑い声が聞こえた。中を覗くと他の奴と談笑してやがる!
僕はすごい剣幕で智治に詰め寄り
「おい!お前教室に来いって言ったよな!?」
智治は「悪い、ちょうど昨日のテレビの話で盛り上がっててさ」僕はイライラしながらも、智治の腕をつかみトイレから出ようとすると。左目に雨の中自転車とバイクの交通事故の映像と、智治が血を流している姿が見えた。
時間にして数秒そして12時となり雑音と共に目の痛みは消え、智治の頭上に真っ赤な砂時計が。
【やっぱり!砂が残り少ない・・・そうか!時間が重ならない11時台に特殊な色の砂時計の人に触れると死ぬ間際のビジョンが見えるんだ】
【でも何故だ?何故突然砂時計が赤に変わった?事故現場は八汐駅近くの交差点か?うちの近所?】
僕はハッとした【今朝雨が降ったら家に来ることになった、そのせいで事故に?そうしたら家に来なければ、もしくは俺と一緒に帰れば変わるのか?】
「なぁ!おい!痛えよ!」智治が腕をさすりながら不思議そうな顔で僕を見る
「お前突然どうした?なんで怒ってんの?」
「悪い、俺の気のせいだった。今日家来るだろ?一緒に帰らねえ?」僕が智治に言うと
「別にいいけど、そのつもりだったし」とあっけらかんとしてる。
【よし!これで俺と帰る事になれば問題ない!あの場所に俺はいないし別な道で行けば運命が変わる!】
僕はホッとした。
丁度、窓の外を見ると雨が降ってきていた。
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