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あの日から、放課後に二人で遊ぶことが日課のようになった。
ももは姿をみせない日もあったが、安彦が土手で寝ていると、たいがい上から覗きこむ。
安彦がはまっている漫画の話を、ももが面白がって聞いたり、ももが安彦におはじきを教えたりと、いつも陽が沈むまで遊んだ。
「やすひこ君、あの雲なんに見える?」
「う〜ん、マジンガーZ!」
「え?どこが?うさぎでしょ」
そういって指差すと、雲が少しづつ、うさぎに見えてくる。
「うさぎだ……」
「じゃああっちは?」
なぞなぞでも出すような顔で雲を指差す。
「馬かな?」
「そう!」
ゆっくりと流れる雲が馬に見えてくる。
安彦は空を見上げるももの横顔を、不思議そうに見つめた。
ももには不思議なところがあった。
同じ小学校のはずなのに、学年もクラスも安彦には教えてくれない。
昼休みに、ほかのクラスや学年を探してみたが、ももを見かけたことがなかった。
ただ先生の名前や、校庭で飼っている鶏の名前などは知っているから、安彦はももが同じ小学校の生徒なんだろうと思っている。
たまごっちから「ピコ〜!ピコ〜!」と電子音が鳴る。
「あ、ご機嫌ななめ。ちょっと貸して」慣れた手つきで、しつけをする。
「もも覚えたじゃん」
「へへ、うちが面倒みるようになってから、いい子に育ってる」
「えー?関係あるかなぁ。貸して」
「あーうんこした!やすひこ君がさわるからだよ!アハハ!」
ももと遊ぶようになってから、安彦は学校に行くことが楽しみになった。授業中も休み時間も、ももと何をして遊ぼうか考えていると、あっという間に放課後になった。
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