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「すみませんね、お忙しいのに」
全く申し訳なさそうではない顔で、その男は言った。
「家じゃなくて、良かったのか? 」
「……『仲村さんと二人の時にでも』って言ったでしょ? 」
そう言って笑う。食えない奴。
「俺も、“仲村さん”だけどね」
「分かってたんだ。さすがー、だけどあなたと二人は勘弁だな」
「こっちも、願い下げだね」
今日は、伊東というこの男に呼び出され、今に至る。……あの日、光から嫌って程この香りがした。
……この男の香水の香りが。
『他の男に抱かれても? 』
あの日、光は俺にそう聞いた。それでも構わない。そう思った。
なのに、この男と一緒にいる光を見ると、腹の底から煮えくり返るような感情に支配された。この男の匂いをさせた光に
『臭い。先に風呂、行けよ』感情を押さえる事も出来ず、怒りをぶつけた。
あの日の光の涙を思い出し、ため息をついて目の前の男に向き直った。
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