19.誰を

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「すみませんね、お忙しいのに」  全く申し訳なさそうではない顔で、その男は言った。 「家じゃなくて、良かったのか? 」 「……『仲村さんと二人の時にでも』って言ったでしょ? 」  そう言って笑う。食えない奴。 「俺も、“仲村さん”だけどね」 「分かってたんだ。さすがー、だけどあなたと二人は勘弁だな」 「こっちも、願い下げだね」  今日は、伊東というこの男に呼び出され、今に至る。……あの日、光から嫌って程この香りがした。  ……この男の香水の香りが。 『他の男に抱かれても? 』  あの日、光は俺にそう聞いた。それでも構わない。そう思った。  なのに、この男と一緒にいる光を見ると、腹の底から煮えくり返るような感情に支配された。この男の匂いをさせた光に 『臭い。先に風呂、行けよ』感情を押さえる事も出来ず、怒りをぶつけた。  あの日の光の涙を思い出し、ため息をついて目の前の男に向き直った。
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