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「分かってるんだろ? 俺達が今どんな状態か。光が、“仲村”じゃなくなるかもしれないと」
「ええ、それをね、少しばかり急かしに来ました」
急かす?
早く、別れろって事か。彼に強い目を向けると、彼も強い目を返して来る。
「……夫婦の事に、口出しを? 」
「ええ、無関係でした、俺は」
「でした? 」
「分かるでしょ? 無関係じゃ、無くなったって事」
軽く笑みを浮かべた男に、殴りそうな手を必死に押さえた。他の男に抱かれてもいいと言ったのは……それでも、光が好きなのは、“俺”だと自信があったからだ。
『私ね、柊晴。好きな人が出来たの』
光はそう言った。だけど、光が愛しているのは……“俺”だと……。
他の男の可能性は全く考えもしなかった。光から、この香りがするまでは。
「俺は、光さんの事が好きです」
目の前の男がはっきりとそう言った。そんな事はとっくの昔に分かっていた。それなのに、はっきりと、わざわざ俺を呼び出して
そう言ったのだ。
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