19.誰を

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「分かってるんだろ? 俺達が今どんな状態か。光が、“仲村”じゃなくなるかもしれないと」 「ええ、それをね、少しばかり急かしに来ました」  急かす?  早く、別れろって事か。彼に強い目を向けると、彼も強い目を返して来る。 「……夫婦の事に、口出しを? 」 「ええ、無関係でした、俺は」 「でした? 」 「分かるでしょ? 無関係じゃ、無くなったって事」  軽く笑みを浮かべた男に、殴りそうな手を必死に押さえた。他の男に抱かれてもいいと言ったのは……それでも、光が好きなのは、“俺”だと自信があったからだ。 『私ね、柊晴。好きな人が出来たの』  光はそう言った。だけど、光が愛しているのは……“俺”だと……。  他の男の可能性は全く考えもしなかった。光から、この香りがするまでは。 「俺は、光さんの事が好きです」  目の前の男がはっきりとそう言った。そんな事はとっくの昔に分かっていた。それなのに、はっきりと、わざわざ俺を呼び出して  そう言ったのだ。
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