19.誰を

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 ――会社に入る前に、名前を呼ばれて立ち止まった。  振り向くと……受付の佐田美奈子。  ため息が出そうになるのをこらえ、彼女の言葉を待った。 「この前、奥さん来られましたよ」  ……俺もその場に、いただろう。 「知ってる。それがどうかした? 」 「あの日から数日後にもう一度。……私に会いに来られましたよ」  佐田美奈子は、意味深な笑みを浮かべてそう言った。  数日後?佐田に会いに? 「知りたいですか? 」 「あのなぁ……」  今度は我慢も出来ずにため息が出た。 「えっとー……一度くらいお食事、ご一緒したいなって。いいですよね? 」  にっこりと笑って、俺の腕に自分の手を添えた。会社の前だ。少し体をずらして、彼女の手を外すと 「……分かった。今日」 「ええ、どうせなら週末……」 「今日! 」 「分かりましたぁ。でも、嬉しい! 」  彼女は俺の表情など気にする素振りもなく、浮かれたような足取りで先に会社へと入って行った。  光が、佐田に?その意味が全く分からなかった。
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