20.過去との約束

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 この日、柊晴はいつものように私に飛び付く様に駆け寄ることもなかった。 「この前……いや、いいんだ」  そう言って、俯いた。再び顔を上げると 「来てくれた。今日も。だから、いいんだ」  そう言った。  京也さんの方を向いて、“10分”そう言わなかった。分かって、いるんだ。柊晴にも。ドアの向こうに私が行けなかったことで、私達には先がないことを。  柊晴の代わりに、京也さんが言った。 「今日は、他の客はこないよ。納得行くまで話すといい」  そう言って奥へと入って行った。 「……俺の事……」 「うん、ごめんね、柊晴」 「……待つよ。だって、先の事は……」 「いいえ、分かってるの、先の事が」 「俺の事は、愛せないの? 」 「……いいえ、私はあなたの事を愛する。今じゃなく、先……未来で。だけどね、あなたが私を愛さなくなるの」 「あるわけないいだろ! そんな事! 」  柊晴が動くと魅惑的な香りが鼻先をくすぐる。脳をしびれさせ、胸が締め付けられる。その奥に、ほんの少しの甘い香り。だけど、混ざり合う二つの香りが……いい香りだと、そう思う私は、もうとっくに決心がついていたのだと思う。 「間違わないで。もう、二度と。あなたの私への気持ちは、きっと……愛ではないと思う。もう出会ってるはずよ、それに、気づけば……」  最後まで聞く事もせず、柊晴は私を抱き締めた。  強く……。
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