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「知るか。そんなもん」
そう言った声が震えてる。
「今の気持ちはどうなるんだよ、光が決めるなよ、俺の気持ちを! 好きだ、好きなんだよ。この気持ちを無かった事に……するなよ」
「……柊晴……」
振りほどこうとしても、ほどけなかった。
「光が、心変わりしたんだろ? それとも、最初から勘違いだったのかよ! 」
……勘違い。
「そうかも……しれないわね。ねぇ、柊晴、人の気持ちは変わるものだわ」
「それ、本当だろうな」
「ええ、本当よ」
「じゃあ! 光の気持ちだって変わるはずだ。これから未来で俺を好きに……なればいい! 」
「……それは……」
「人の気持ちは変わるって言った! 俺の気持ちが変わるのか、光の気持ちが変わるのか、未来に希望があるのに、俺は……俺は諦めない! 」
そっと、柊晴の胸を押すと、倍以上の強さで引き留められる。
「諦めない、絶対に。会えなくなるくらいなら、このまま離さない」
……柊晴の強い鼓動が、私へと伝わる。こんなにも強く、こんなにも熱いのに……
ここにも、ここにも未来が……未来がなかった。
ここでは、今と呼べる、過去があるだけ。私は、帰らなければいけない。
……未来へ。
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