2189人が本棚に入れています
本棚に追加
どのくらいの時間、抱き締められていたのだろうか。
「1年後の、今日、ここでもう一度……会ってくれないか」
ようやく腕を緩めた柊晴が、そう言った。
「やっぱ、半年後」
私の返事を待たずに、またそう言った。
「……え、柊晴……」
「ああ! 無理だ。無理無理。やっぱ、3ヶ月後!! 」
……未来とは云いがたいほど瞬時に期間が縮められていく。
「ふ、何、それ。ちょっと……全然……」
緩められた柊晴の腕に再び力がこめられる。
「1秒だって、離れたくないんだ。今までの一週間、どれだけ我慢したと思ってんだよ。無理。限界。お願いします。3ヶ月後。ここで……」
「柊晴、それ、意味ある? 」
「光にとったら3ヶ月でも俺に取ったら3年分だよ」
「何それ、誰にとっても3ヶ月は3ヶ月でしょ」
「“うん”って言ってくれるまで、離さない」
耳元でそう囁く柊晴に……頷くしか、なかった。
「分かった」
私がそう言うと、柊晴は腕を離して
小指を出した。
「約束、だからな」
「うん」
そう言って、柊晴の小指に自分の小指を絡めた。
「子供みたいだな」
そう言って柊晴が笑った。その日、初めての笑顔だった。
この約束を破るのは、きっと、私じゃなくて、柊晴なのではないかと思う。たった3ヶ月先の約束なのに。
「確かめたい。変わらない事を」
それは、柊晴の気持ちか、私の気持ちか……柊晴はそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!