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「あなたって、いい香りね」
「ああ、好きなんだ。これ。光は? 香水はつけないの? 」
「この前買ったんだけど……」
「へぇ、どんなの? 」
バッグから、アトマイザーを出して渡した。あの日、未来でも柊晴が、手にしてた。永遠の香り。
「今日、客こないって言うから、いいかな」
そう言って控えめに自分の手首につけた。それを私の手首に合わせる
「今日は、お揃いの匂いだな」
「あ、でも……あなたの香りが……消え……」
「これ、めっちゃ好き」
私の手首から香りを嗅いで、柊晴がそう言った。そのまま、手首に口づけた。
「忘れないで」
唇を離すとそう言った。
「俺との、約束」
「ええ、あなたもね、柊晴」
そう言って笑った。
最後のドアベルも、優しく、静かに鳴った。ドアの閉まる余韻を背に、私は私の時を歩き出した。
路地を抜けると街は賑やかでゆっくりゆっくり、味わうように歩いた。マンションへ着くと、柊晴が出迎えてくれた。
「お帰り」
そう言って微笑む。
「ただいま」
そう言って、私も微笑んだ。
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