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「……俺の……せい? じゃ、ないよね」
「え、違うわよ」
あ、そうか。以前の……“告白”……。あれから、伊東くんとは特に何もなく、仕事上の会話がほとんどだった。
「だよね、ちょっと自惚れた。……俺にそんな影響力ない……か」
そう言って、少し拗ねたように口を尖らせた。
「十分、影響してるわよ、助かってる」
「……はいはい、どーも。柊晴さんは、ご存じなんですか? 」
柊晴?
「ええ、勿論」
「……じゃあ、なぜ? 」
「離婚、するの」
「そう。じゃあ……余計に仕事は辞めないほうが……あ、財産分与とか? あの人、貰ってそうだもんなー」
「もうっ! そんなのは……」
私が笑うと
「なら、余計に仕事は続けたほうが……いいんじゃないですか? 」
「そうね。でも、離れようと思って。ここから」
「柊晴さんから、でしょ? 」
「もう、伊東くん……容赦ないわね」
「行き先は、教えないつもりなんだ」
「ええ」
「俺にも? 」
そう聞く伊東くんに微笑んだ。
「そうした方がいいでしょ? あなたが喋らないとも、限らないし」
伊東くんが、伏せていた綺麗な目をこちらに向ける。それに耐えきれず、今度は私が目を伏せた。
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