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柊晴は、私の様子にため息をつくと、私の側に腰かけた。
「体調、良くないだろ。そんなに急いで出て来て行かなくても」
気づいてたんだ。
「休むわよ、しっかり。それから、また働くし、大丈夫」
「な、持って行けよ」
そう言って1枚のカードを差し出す。メインバンクのキャッシュカード。
「いらないわよ。ね、再婚したら奥さんと子供に怒られるわよ。それに、あなたも後悔するでしょ」
そう言って返した。
「出て行くなよ、勝手に」
そう言った柊晴にドキリとした。
「ええ」
「離婚届も、一緒に。絶対だからな」
「ええ」
私をしばらく見た後で
「手伝うよ」
そう言ってくれた。
「いいわよ、手伝って貰うほどないもの」
それに、柊晴に手伝ってもらったら、出て行けって言われてるみたい。勝手だけど、そうは思われたくない自分がいた。
「……懐かしいな、この服。好きだった」
「うん……」
「ああ、これも……」
「うん……」
そう言う柊晴の方を見られなかった。
「凄いな、これ、手帳全部置いてるんだな」
「ええ、えっと……実家から独り暮らし始めてからだから……何冊になるのかしら。日記をつけてて……」
「読んでも、いいか? 」
「え、ダメよ恥ずかしい」
「じゃあ、俺と出会う前……とか」
そう言って、古い順に並べてあるそれの……1冊を棚から引き抜いた。
「ちょっと、ダメ! ダメだって」
「1冊、貰えないか? 」
「はぁ!? 絶対ダメダメ、ダメってば! 」
「残念」
そう言って、パラパラと捲ると、手を止めて、読もうとする柊晴の手から手帳を取り上げた。
「ダメ、ってば」
そう言って、全部の手帳をバッグに詰め込んだ。柊晴が、残念そうに首をすくめた。もう、全く何を考えてるのか……。
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