21.未来へ

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 柊晴は、私の様子にため息をつくと、私の側に腰かけた。 「体調、良くないだろ。そんなに急いで出て来て行かなくても」  気づいてたんだ。 「休むわよ、しっかり。それから、また働くし、大丈夫」 「な、持って行けよ」  そう言って1枚のカードを差し出す。メインバンクのキャッシュカード。 「いらないわよ。ね、再婚したら奥さんと子供に怒られるわよ。それに、あなたも後悔するでしょ」  そう言って返した。 「出て行くなよ、勝手に」  そう言った柊晴にドキリとした。 「ええ」 「離婚届も、一緒に。絶対だからな」 「ええ」  私をしばらく見た後で 「手伝うよ」  そう言ってくれた。 「いいわよ、手伝って貰うほどないもの」  それに、柊晴に手伝ってもらったら、出て行けって言われてるみたい。勝手だけど、そうは思われたくない自分がいた。 「……懐かしいな、この服。好きだった」 「うん……」 「ああ、これも……」 「うん……」  そう言う柊晴の方を見られなかった。 「凄いな、これ、手帳全部置いてるんだな」 「ええ、えっと……実家から独り暮らし始めてからだから……何冊になるのかしら。日記をつけてて……」 「読んでも、いいか? 」 「え、ダメよ恥ずかしい」 「じゃあ、俺と出会う前……とか」  そう言って、古い順に並べてあるそれの……1冊を棚から引き抜いた。 「ちょっと、ダメ! ダメだって」 「1冊、貰えないか? 」 「はぁ!? 絶対ダメダメ、ダメってば! 」 「残念」  そう言って、パラパラと捲ると、手を止めて、読もうとする柊晴の手から手帳を取り上げた。 「ダメ、ってば」  そう言って、全部の手帳をバッグに詰め込んだ。柊晴が、残念そうに首をすくめた。もう、全く何を考えてるのか……。
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