21.未来へ

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 最終日は、お世話になった人に順に挨拶をして会社を出た。  そこで、呼び止められて振り向く。  ……伊東くん 「ほら、戻らないと……」 「昼休憩、ずらしたから」  ……何か言いたそうに私を見つめ、俯いた。 「ごめん、しつこい、よな」  そう言った伊東くんに微笑み、首を横に振った。  もうすぐ、1日で一番気温が高くなる時間だというのに……冷たい風が目の前を通りすぎて行く。 「元気で」  そう言った私を人目も憚らずに引き寄せた。だけど、彼の胸に到着する少し前で止められる。伊東くんの手だけが、私の背中に置かれたまま。 「忘れないで、俺の……事も」  耳元でも小さな声。 「元気で」  そう言うと、背を向けて手を上げた。優しい言葉が優しい香りとともに、私の胸に小さな旋風のように舞って……消えた。
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