22.過去へ

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 ……佐田さんだ。 「もしもし?  佐田ですけど」 「ええ」 「逃げる準備は万端ですか? 」  随分な物言いに 「あのねぇ」 「だって、ずるくありません? 結婚してるのに、普通そんな別れ方、します? 」 「……時間が必要で……それに、あなたにも都合がいいでしょ、私が居ない方が」 「それは、そうですけど……逃げるだけなんだもん。情けない」 「あ、あなたには分からないわよ」 「ええ、分かりませんね。だって、本音を言わないんですもん。それで分かれって? 何ですか、それ。相手の気持ち? 馬鹿ばっかり。自分を守ってるだけでしょ? 」 「あなたに関係ないでしょ」 「関係ありませんねぇ。だけど、巻き込んだのは、あなたでしょ? 」  そう言われ何も言い返せない。その通りだ。 「聞かせてもらえます? 本音。彼を……愛してるの? それとも、いらないの? 」 「……愛してる」 「じゃあ、なんで? 」 「彼の幸せは……」  私の元には……私達に、未来は……ない。 「ですって、聞きました? ちょっ、」  佐田さんの声、それから…… 「(あきら)! 動くな! そこから! 絶対だ」  聞こえて来たのは、佐田さんの声ではなく……柊晴の声。  荷物を掴むと、駆け出した。鍵をかけて、その鍵はドアポケットへ。エントランスを抜け、タクシーに手を上げた。  お願い、早く!
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