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止まったタクシーの運転手が、私の荷物を見て
「トランク開けますか? 」
そう聞いたが。、後部座席に詰め込んで
「早く出してっ! 」
そう叫ぶように言った。
「どちらまで」
「一先ず、駅まで、早くお願いします! 」
「何だ? 」
そ う言った運転手の前に柊晴がいた。
近くから、電話をしてたのか……運転手に窓を開けるように合図する。
「光! 約束が違うだろ。ああ、いいわ、降りろ! 」
柊晴の剣幕に、運転手がたじろぐ。
「柊晴、外だから。お願い」
そう言ってなだめると
「降りろ」
今度は穏やかに、だけど……強い口調でそう言った。
「ごめんなさい。無理なの」
説明する気も無かった。この場から立ち去りたい。ただ、その一点だった。
「帰ってくる、きっと。だから、お願い。今は……」
「信じられる訳ないだろ」
「お願い」
「無理だ」
「お願い、必ず戻る……だから」
胃が……痛い。
握りしめた手を胃に当てた。苦痛に顔が歪む。柊晴がそれに気付き、表情を変えた。
「どれくらいの期間が、必要なんだ? 」
私と同じくらい顔を歪めて柊晴がそう聞いた。
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