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「……3年……」
以前、柊晴が言ったようにそう返した。少し考える素振りをして
「無理」
柊晴は低い声でそう言った。
「そんなの……」
「誕生日。光の誕生日に、帰って来い。それから……これ」
そう言って、キャッシュカードを渡してくる。
「いらないって……この前も」
「駄目だ。受け取らないなら、行かせない」
そう言われて、仕方なく受け取った。
「月に1回は必ず下ろせ。出ないと、離婚しない。この約束だけは守って貰う」
「なら、今……離婚」
「光。力で降ろそうか? 」
「……分かった」
「約束だ。帰って来い」
そう言って、窓から小指を出す。絡めた指。守らなかった約束。再びの約束。なのに、
「信じてる」
柊晴はそう言った。
「分かった」
「すみません運転手さん、行って下さい」
柊晴がそう言った。運転手は、私と柊晴を交互に見て、走り出した。
駅から電車に揺られ……私は祖母の家へと向かった。祖母宅へ着く頃には胃痛は幾分、治まっていた。
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