23.繋げるもの

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 静かな、静かなこの場所で、子供の頃の記憶が甦る。祖母の前に行くと、いくら取り繕ったって子供の頃に戻ってしまう。  夢みたいに楽しかった夏休み、冬休み、春休み。  子供の頃に戻ってしまう。総ちゃんが社会人……か。赤ちゃんだったのにな。  離乳食を食べさせてる叔母さんに頼んで、私も食べさせたり  オムツを替えるのを見てたっけ。下の部屋からの襖の開く音が聞こえる。祖母が眠る準備をしているのだろう。人の気配を感じさせる、日本家屋。優しい。ここは。  一人になって届いた段ボールは、このまま新居に送るか。そう思って、手持ちしていたボストンバッグだけを片付けた。落ちた体重も、この調子だとすぐに戻るだろう。  生理もきっと、また……。いつか、子供を持ちたい。梳いた髪が数本抜けて、ゴミ箱に捨てた。  ストレスで禿げたりして。そう思ってもう一度髪を両手梳いた。また数本指に抜けた髪が引っかかる。んー、これくらいは普通か。その数本をもう一度ゴミ箱に捨てると髪を整えた。  ……え……  つるりとした皮膚の感触に固まった。  嘘。髪が……ない?  驚いて、胸がばくばくと鳴った。ストレスからの部分的な脱毛だろうか。  大きなため息を一つ。
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