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「暗くなると、いけないから、早めに帰りなさい」
祖母にそう言われ、昼過ぎに祖母の家を出る事にした。最寄り駅までは総ちゃんが送ってくれる事になった。荷物は祖母に悟られないように、新しい住所へ先に送った。そこへ、祖母が沢山の食材を追加してくれた。
「ありがとう、おばあちゃん」
「今度は柊晴さんといらっしゃい」
そう言った祖母に、笑顔で返した。胃痛も、治まり、体重も少し戻った。頭部の脱毛は、治らない。
「光姉ちゃん……」
「総ちゃん、私ね、聞かない事にした」
「……そっか」
「柊晴に、聞く」
「うん、それが一番だね。待ってるよ、あの人。光姉ちゃんの事」
総ちゃんは、私と柊晴との間に何があったのかを感じ取っていたのだと思う。
「うん、そうだね。ありがとうね、総ちゃん」
「あ、うん。東京出たら連絡する! 案内、宜しく~! 」
総ちゃんに、お礼を言って電車に乗った。……ここからは、誰も知らない街。
荷物は明日、届く。新しい家には何もない……何も。
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