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「私も、柊晴に聞きたい事がある」
『今、聞けばいいだろ。すぐにでも……』
「ごめん、充電が切れる」
『絶対だ、絶対だからな。誕生日、マンションの前、7時。必ず』
柊晴がそう言うと、電話は切れた。柊晴がそこまでして別れたくない理由が
もし、もし、そうだとしたら……私はどこで、間違えていたのだろうか。
佐田さんへ伝えた、あの日の私の“愛の告白”は、柊晴に伝わったのだろうか。
頭の中に一瞬、鮮明に浮かんだ。フラッシュバック。残っているはずの無い香りを左手に求めた。
頭の中で、香る。心の中で、香る。
知ってる、ずっとずっと前から、私は……あの香りを。
喫茶店で、路地裏のあの喫茶店で、腕を掴まれた瞬間の……あの、香りを。
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