24.過去の筆跡

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 これは……  私の4年前の記憶だ。つい最近経験した、4年前の記憶。  なのに、新しい手帳ではなく、なぜ過去(こっち)の手帳に?  伊勢神宮の参拝。そこでの感謝と願い事。  “こんなに好きになれる人に出会えた事に感謝。ずっとこの幸せが続きますように”  そう書かれていた。当たり前だけど……私の筆跡だ。なぜ、ここに?その手帳の日記のページとカレンダー部分に書かれた予定表を見比べる。  年号は間違いなく、今年ではない。行った相手は同じ。  ……違う。行った相手は、今年、私が一緒に行ったのは春香だ。だけど、柊晴がいた。今年は、そこで柊晴が待っていた。  私に過去の方の記憶は、ない。その手帳を閉じると、その翌年の手帳を開いた。  私が柊晴と出会ったのは間違いなく、ここ。この年だ。今も鮮明に思い出せる。 『ごめん、何か上手く出来なくて』  柊晴は春香にそう言った。  慣れてそうな風貌と反したそのセリフに、私の柊晴に対しての好感度はその一言で、随分と上がった。  春香が私の耳元で 『仲村さんも、光のこと、気に入ったみたいだよ』  私にそう言って、柊晴には、意味深に笑ってその場を後にした。  ……あれは……  仕組まれたものだった。
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