25.欠片

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 それ以外は、まるで、戻ったみたいだった。戻れるものなら、戻りたい。そう思った過去に。  だけど、その過去と明らかに違うのは……俺に寄り添わない事。身体だけじゃない。心も。  別人。別人なのかもしれない。あの時と、今は。ただ、同じ入れ物に入った別人みたいだ。俺も、光も。  “どうかしてる”俺は。今の光は……過去の幻影なのか。行き着く先は、離婚。光が望むのは……別れだ。永遠の、別れ。  処方された薬。時折押さえるみぞおち当たり。目に見えて痩せていく。用意しているのは、ほとんど俺の為の食事。光は、それにほんの少し、口をつける。  このままでは、いられない。気持ちではどうにもならない。俺といることが、ここまで光を苦しめるなら。
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