26.未来への約束

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「何だ、結局行かせたの? 」  佐田が俺の胸に財布を押し付けてそう言った。 「ああ 」 「家、お邪魔してもいいですか? 」 「……駄目だ 」 「ふんっ、じゃあご飯くらい食べさせてよ。もう、そこでいいから 」  そう言った彼女と、直ぐ近くの店へ入った。酒もないような、食事だけの店へ。 「ねぇ、柊晴さんって、奥さんに愛はあるの? 」 「……当たり前だろ。何の為に……」 「何の為にってのは、私が言いたいセリフですけどね。面倒臭い。だいたい『当たり前』って何よ。私は、“愛してるか”聞いたんですけど? 」 「……愛してる 」 「“今”も? 」 「どういう意味だよ」 「気持ちは変わるでしょ? 昔好きだったのを今も好きだと思い込んでるんじゃないの? 今あるのは……情。だったりして」  ……情…… 「だって、あまりにも距離があるでしょ。夫婦ってもっと生々しくてもいいのに。まるで、壊れものを扱うみたい。美術品のコップみたい。使う為に作られたのに、飾られるだけ。使うのは、違うコップなの? 」 「してない、浮気は 」 「へぇ、でも飾られるだけの妻は……逃げちゃった。過去に価値を置かれたコップなんてねー」 「光は……何て言ったんだ? さっき」  俺を…… 「聞こえなかったんだ。さぁ、何て言ったのかな。何で私が教えてあげなきゃなんないわけ!? ……自分で、聞けば!? 」  おもいっきり、俺を睨み、語尾を強めた。 「夫婦なんでしょ? ……まだ」 「……悪かった」 「ええ、本当にね。やってられるかっての。馬鹿じゃないの」  バッグを持って立ち上がり、俺を見下ろして言った。 「格好つけて、綺麗な思い出が欲しいの? それとも、醜態さらして望む未来が欲しいの?」   最後にもう一度おもいっきり俺を睨むと店から出て行った。
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