26.未来への約束

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 ナビの到着時刻よりも随分早く着き、少しスピードが出ていたかもしれない。そう反省した。庭先にいたその人に声を掛けた。 「お義祖母ちゃん、ご無沙汰してます……光は……」  俺がそう声を掛けるとお義祖母ちゃんが、驚いたように背を伸ばした。 「あら、迎えに来る予定だったの? 2時間くらい前に帰って……ああ、すれ違っちゃったわね。……少し、上がって」  そう言われ、はっと気付いた。 「ごめん、俺……光が世話になったっていうのに、手ぶらだ」  お義祖母ちゃんが、おかしそうに笑った。 「光を迎えに来る事で、頭がいっぱいだったのね。それが一番の手土産だけど。いいわよそんなの、家族でしょ」  仏壇に手を合わせて振り向くと、お茶が用意されていた。 「光の体調は? 」 「大丈夫よ、もりもり食べてたもの 」 「はは! そっか。ばあちゃんの飯、旨いからな」 「で、どうなってるのよ、あなた達は」 「ごめん、俺のせいだ」 「大丈夫よ、あの子は、もう大丈夫。だから……」 「うん。話してみようと思う。構わない? 光のお父さんとお母さんにも……」 「二人の事よ、もう。ね、あなた達の先は長いわよ。さっさとしないと……ああやって、灰になる」  そう言って、仏壇を指差す。 「文句言う口はあるくせに、大事な事は言わない。言いたいことだけ言って、自分勝手なじいさんだったわ」 「はは! でも、聞こえてきそうだけどな」  遺影が何か言いたそうに、笑った気がした。 「確かにね。……えっと、お夕食……」 「いや、いいや」 「そうね、光と食べなさい。今度は二人で来るように言っておいたからね」 「うん。ありがとう、お世話になりました」  そう頭を下げると 「ばあちゃーん、光姉ちゃん送って来た。これ。姉ちゃんからー」  玄関から、元気な声がした。
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