26.未来への約束

6/10
前へ
/440ページ
次へ
「え!? 柊晴兄ちゃんじゃん!? 今 、帰って……ああ、ばあちゃんこれ。駅前の桔梗堂の芋蒸し羊羹、姉ちゃんから」 「あら、まあ」 「久しぶりだなぁ、総一朗! 男っぽくなって」  総一朗の肩に腕を回した。 「出会った時は、毛も生えてなかったのになぁ」 「いや、とっくに生えてた。むしろ、生え揃ってた。兄ちゃんより、濃いわ! 」 「マジ……ちょ、見ようか? 」 「……あなた達、馬鹿な事言ってないで。ほら、柊晴さんも。光が待ってるでしょ? 」 「あ、本当だよ」 「おばあちゃん、ありがとう。お世話になりました。また、来るから」  そう言って、見送ってくれる義祖母にもう一度頭を下げた。外へ出ると、総一朗が 「ごめん、光姉ちゃんにちょっと話しちゃったんだ。だけど、『柊晴に聞く』って、姉ちゃん言ってた。だから……何かあったら、ごめん」  総一朗の頭をくしゃくしゃと撫でた 「大丈夫だ、心配すんな。どうなっても、問題、ない。元気なら、それでよし」 そう言って笑ってやった。 「兄ちゃんいたら、姉ちゃんも大丈夫だな」 総一朗も笑った事で、ここにいた光が元気に過ごしていたことが分かる。 「あー、次は一緒に風呂でも行くか」  俺がそう言うと 「おっけー、会社の盆休みには、帰るよ、ここに」  そう言った総一朗に手を上げて車に乗り込んだ。  お義祖母ちゃんと、総一朗が俺の車が見えなくなるまで見送ってくれるのがルームミラーから見えた。  そうか、総一朗ももう社会人……か。早いもんだな。どこへ向かえばいいのか、俺は……。  次のインターで車を停めると、光に電話を掛けた。電源が入っていない。どこへ行ったのかも、分からない。何回掛けても繋がらなかった。
/440ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2189人が本棚に入れています
本棚に追加