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「え!? 柊晴兄ちゃんじゃん!? 今 、帰って……ああ、ばあちゃんこれ。駅前の桔梗堂の芋蒸し羊羹、姉ちゃんから」
「あら、まあ」
「久しぶりだなぁ、総一朗! 男っぽくなって」
総一朗の肩に腕を回した。
「出会った時は、毛も生えてなかったのになぁ」
「いや、とっくに生えてた。むしろ、生え揃ってた。兄ちゃんより、濃いわ! 」
「マジ……ちょ、見ようか? 」
「……あなた達、馬鹿な事言ってないで。ほら、柊晴さんも。光が待ってるでしょ? 」
「あ、本当だよ」
「おばあちゃん、ありがとう。お世話になりました。また、来るから」
そう言って、見送ってくれる義祖母にもう一度頭を下げた。外へ出ると、総一朗が
「ごめん、光姉ちゃんにちょっと話しちゃったんだ。だけど、『柊晴に聞く』って、姉ちゃん言ってた。だから……何かあったら、ごめん」
総一朗の頭をくしゃくしゃと撫でた
「大丈夫だ、心配すんな。どうなっても、問題、ない。元気なら、それでよし」
そう言って笑ってやった。
「兄ちゃんいたら、姉ちゃんも大丈夫だな」
総一朗も笑った事で、ここにいた光が元気に過ごしていたことが分かる。
「あー、次は一緒に風呂でも行くか」
俺がそう言うと
「おっけー、会社の盆休みには、帰るよ、ここに」
そう言った総一朗に手を上げて車に乗り込んだ。
お義祖母ちゃんと、総一朗が俺の車が見えなくなるまで見送ってくれるのがルームミラーから見えた。
そうか、総一朗ももう社会人……か。早いもんだな。どこへ向かえばいいのか、俺は……。
次のインターで車を停めると、光に電話を掛けた。電源が入っていない。どこへ行ったのかも、分からない。何回掛けても繋がらなかった。
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