26.未来への約束

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 ……スマホ……そう、だ。  スマホを慌てて開いた。あの日、光が出ていった日に撮った写真。慌てて撮ったもんだから、ピンボケもしてるし、同じのが何枚もある。第一、人の日記をこんな風に見るなんて悪趣味だ。だけど、知りたかった。 海鮮が食べたいと言った光と、海鮮を食べに行った。この前と、同じくらいの季節だったか……伊勢神宮の広い境内を手を繋いで歩いた。 『ねぇ、何てお願いしたの? 』 『ん? ずっと……いや、いい』 『何!? 気になるなぁ』 『そっちは? 言ったら、俺も言う』 『じゃ、いいや。秘密ー』  本人さえ、忘れている、その願いを知りたかった。秘密って言った。それを。今年、一緒に行った時に願ったのは 『“柊晴が、幸せでいられますように”』  だと光は言った。俺は、あの日、以前に願わなくて後悔した願い事の方を光に伝えた。 『“ずっとこの幸せが続きますように”だよ』と。 “ずっと好きでいてくれますように”だなんて……昔の俺は願った。  ……スマホに目を落とす。写真に写っていたのは、光の綺麗な文字。  “こんなに好きになれる人に出会えた事に感謝。ずっとこの幸せが続きますように”  たった2行の……俺が知りたかった事。  俺は今年、神社でのあの時は……何も願わなかった。  ただ……こんなに好きになれた人に出会えた事に……感謝した。
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