27.|永遠《エタニティ》

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 約束の時間ちょうど。何時もより少し明るい店内。そこに〈柊晴〉はいなかった。  時間に間に合ったのに、いない事は分かっていた。  そこにいたのは……京也さんと、春香。  私を見ると、春香は俯き……その場にしゃがんで、泣き出した。そんな春香に京也さんが寄り添う。柊晴の方を振り返ると、柊晴も涙ぐんでいた。 「柊晴、もう二人で話したのか? 」  京也さんが柊晴にそう聞いた。 「いや、まだだ」 「今日は、帰れ。それで……先ずは二人で、しっかり話し合え」 「ああ」 「光ちゃん、春香(こっち)は、俺が何とかするから」  京也さんはそう言ったけれど、私は泣きじゃくっている春香の前に同じ様にしゃがんで、春香の肩を抱いた。 「ごめんね、春香。……心配、したよね。ありがとう」  そう言うと、春香はぶんぶんと首を振って 「……許さない。許さないからね、光。いなくなるなんて」  それから、柊晴の、方を見ると 「柊晴くんが、気の長い事をしてるからっ! でも、今日は、譲る」  そう言った。 「そうだな。土曜か日曜、もう一度ここへ。比較的、客が少ないから」  京也さんが、そう言った。その言葉に、そっと回りを見渡すと、落ち着いたお客さん達が見て見ぬ振りをしてくれているのが分かる。春香が慌てて立ち上がって顔を真っ赤にして 「さ、早く行って! 」  そう言って、ドアの方を指した。 「土曜日は、二人でいたいから、日曜に来るわ」  柊晴が、京也さんにそう言った。 「お前なぁ、まぁ、いいわ、久しぶりに見たしな、お前のそんな……腹立つ顔」  そう言って笑った。 「ありがとう、“京也くん”」  私も、そう言った。先にドアへと進む私を柊晴が止めた。腕に強い力がこもる。目が合って……数秒。 「ふっ、後は二人でやれ」  京也くんの言葉に4人で笑った。  重量感のある木のドアを開ける。その重さに、後ろから柊晴の力が加わった。柊晴の力が加わった事で、急に軽く、勢いづいて開いたドアに外へ出た。  ……二人で。  ……カラン……ドアの向こうで、ドアベルが……優しく鳴った。
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