27.|永遠《エタニティ》

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 私達はそのまま、マンションへと入った。柊晴が開けてくれた玄関のドアに入る。  ……随分と久しぶりな気がする。 私の使っていた鍵はすぐそこの棚に置かれていた。リビングまで入ると、柊晴が入って来ない事に気づいて振り返った。  ……まだ玄関にいた。柊晴は、片手で顔を覆うと小刻みに、震え出した。喉から出る声を押し殺すように。そんな柊晴をそっと抱き締めた。 「ごめんね、柊晴。ごめんね、あなたの事を忘れて」  嗚咽が漏れるほどに、その場で泣く柊晴にどれほどの事だったか、計り知れない。 「光……愛してる」  柊晴は沢山の嘘を私についた。きっと、きっと、数えきれないほど。だけど、優しい嘘だった。  ……愛に嘘はつかなかった。 『愛していない』  私がついたのは、たった一つの嘘。だけど、私のついた嘘の方が……きっと、酷く柊晴を傷つけた。  そんな柊晴に「愛してる」そう伝えた。  どのくらいの時間が過ぎようと、私達はそこでずっと、抱き合っていた。
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