27.|永遠《エタニティ》

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 柊晴の部屋に入ると、私をベッドに座らせた。柊晴が引き出しを開けて、シルバーのアトマイザーを出して、ベッドに吹き掛けた。 「ちょっとね、大事な話をしよう。あー……さっさと抱きたいけど……」  そう言って、おどける。 「これ、さんきゅ」  そう言って持ち上げたのは、アリュールのボトル。 「ね、それも吹き掛けて」  私がそう言うと、柊晴が軽くベッドに吹き掛けた。 「……思い出した、訳じゃないんだな? 」 「うん、ごめん」 「いや、構わない。俺もいっぱい忘れてるわ、この年になると」  柊晴は、私に関しては小さな事でもよく覚えていてくれていた。 「あ、私も聞きたいことがあるんだった」  そう言ってバッグからクリアファイルを取り出した。 「……やっぱり、光が持ってたんだな」 「見て無かったの、中身。誰かと書いたんだって思ってたから、こっちと一緒に出してやろうかと」 「はは! バツついて、マルつくだけだ」 「マルはつかないわよ……」 「うん、で、何が聞きたい? 」 「私と柊晴って、結婚……してるのよね? 」 「……はぁ。書いただろ、で、出しただろ? 」 「いや、ここに婚姻届(これ)があるって事は……出してないパターンも……」 「それは、忘れてる時に書いたやつだ! 新たに書いて出したわ、運転免許証も“仲村”になってるだろ!」 「……そうだとは、思ってたんだけど、念のため」 「どのみち離婚届(これ)はいらない」  柊晴はクリアファイルから離婚届を取り出すとビリビリと破いた。 「こっちは……宝物」  そう言って、いつかの婚姻届はとても大切そうに引き出しへとしまった。  エタニティとアリュールの香りがまざって部屋の中で香る。 「ああ、でも……私、柊晴と混じった香りが好き」  そう言って、柊晴の首筋に鼻をつけた。そんな私をくるりと前を向かせると後ろから抱き締められた。今度は柊晴が、私の首筋に顔を埋めた。
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