28.再築

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「会社、休みたい」  翌朝、真顔でそう言う柊晴に笑う。 「……私も、また仕事探さなきゃ」 「……しばらくいいんじゃないか? 体調も良くないんだし」 「……ええ、でも胃は治ったし。けど……」  まだ、生理が来なかった。子供は欲しい。もう一度、病院に行こうかと思っていた。 「……治らないのか? 」 「生理がね、来ないの。……子供……」  言いかけた私に、柊晴が微笑む。 「出来なかったら、それはそれで構わない。だけど、本調子じゃないって事だよな。病院、行った方がいいんじゃないのか? 」 「うん、明日にでも行ってみる。あ、そうだ……今日は帰るね」  そう言った私に柊晴が眉を寄せる。 「光の家は、ここだけど? 」 「うん、ここ、ね」  そう言って、柊晴の胸に顔を埋めた。また涙目の柊晴に 「だけど、現実問題として、向こうの家を何とかしなければならないから」 「じゃあ、土曜日に一緒に行く」 「……でも」 「それまでは、ここにいて」 「分かった。何食べたい? 夕食」 「……高野豆腐」  そう言って、ひきつった顔で笑った。 「あはは! 分かった。何か作って待ってるわね」 「あー、行きたくない」  やっぱり、涙目でそう言った柊晴を無理矢理玄関まで押し出した。 「今夜は、問い詰めるからね」 「……はい。一緒にいられるなら、お説教くらい」  そう言って、玄関先でどちらからともなくキスをした。柊晴が鼻をスンと鳴らして、出かけた。  ……泣き虫だな。大丈夫なのだろうか、あんな部長で。
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