28.再築

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「俺は、あっちが素だからな」 「……提案は、春香でしょ」 「ああ、『4年前に戻りたい』って光に言われて落ち込んでたからな、俺が。『気持ちが最初から無かった』って……覚えていてそう言ったのか、俺に会う前に戻りたかったのか……どう思って言ったんだ? 」 「柊晴がね、4年前に凄い好きな人がいたってたまたま聞いちゃったの。その人に出会う前に、私に出会えばいいなって……思ったのかもしれない」 「聞けば、良かったのに」 「柊晴もね」 「怖かった。……ダメだと思った。目の前で倒れた光に。みるみる赤く、広がっていく光景に。……失うのが怖かった。忘れられることが、怖かった。『愛してない』と、言われる事が……怖かった。白と赤のコントラストは……今でも見れないんだ」  そっと柊晴を抱き締めた。 「……ごめんなさい」 「違うんだ……間違えた、どこかで。ただ、側にいてくれたらいいだなんて……光は、もう大丈夫なのに、いつまでもいつまでも……触れるのが、怖かった」 「うん、もう大丈夫。柊晴がいてくれたから、私は大丈夫」
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