28.再築

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 私が若返ったら、気付くかしら、なんて……私が気づかなかった。 『戻りたければ、戻ればいい』  最初はとても簡単な、発想だった。  暗い照明、奥の席他にお客さんのいない店内。短く見せるようにサイドを流した髪 「肌を若く見せる、何か色々」  柊晴が付け足す。  それを施したのが、春香……その固めた髪を戻すのにシャンプーの香りが残った。甘い移り香も、シャンプーの香りも……私の為だった。 「ふっ」  笑える。  だけど、あんな非現実的なことが止められなくなったのは……水曜日の一時(ひととき)が現実ではぶつけられない気持ちをぶつけられる場所になっていたからだ。お互いに、拠り所になっていた。  ……もう、必要……ない。 「ごめん」 「いいわよ、楽しかった。むしろ、27歳に見えるメイクの方が、今は気になるくらい」  そう言った。 「日曜に、春香に聞けばいい」 「そうするわ」  ──この日も抱き合って眠った。
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