28.再築

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 いつもの様に穏やかな運転で到着した。 「案外、近くなんだな」  私の借りた家の前に車を停めると柊晴がそう言った。 「そうね、確かに。結局は離れたく無かったのかしら」  そう言うと、柊晴が後ろから抱き締めて来る。 「1秒だって、離れたくない」 「喫茶店では、そう言ったくせに、家では3年って言った」  責めるように睨むと 「どっちも、本当だよ。3年後に好きになってくれるなら待つよ。……ただし、離れずに……な」  舌をペロッと出して、そう言った。 「この部屋、置いておこうかしら」 「何でだよ」 「恋人気分が味わえる」 「……二回も味わったから、俺は勘弁だね。それより、夫婦を始めよう」  そう言って、手際よく荷物を詰めこむ。 「それにしても、何もないなぁ」  そう言われ、顔が赤くなるのが分かった。 「……だって……」 「うん、ちょっと離れたかっただけ。だろ? 」 「もう、十分」 「俺もだ。折角だから、ここでも1回しとく? 」  なんて茶化す柊晴を甘く睨む。 「……あ」  違和感を感じて、直ぐにトイレへ駆け込んだ。
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