29.次の約束

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 ――翌日の日曜日  重量感のある木のドアを開けると  カラン  今日は随分と明るい音を奏でてくれた気がした。強ばった春香の顔に吹き出した。 「怒らないわよ、別に」  私がそう言うと、半泣きで抱きついて来た。 「光~! 」 「怒るわけないでしょ。むしろ、感謝しかないんだから」 「へ? 感謝? 何で? 」 「一緒に、住んでくれたでしょ? 」 「えっ、うん。楽しかったねぇ! 」 「……心配、してくれて」 「あ、そうだった。そうだった」 「私達をもう一度出会わせて、結婚させてくれた」 「あ、そうだった。そうだった。これだ! 」  そう言うとカウンターの内側から、紙を取り出した。 “設定”  そう書かれた紙には、私と柊晴が出会うスケジュール、概要がしっかり書いてあった。 「間違うと、いけないからね」  そうだった。そうだった。……春香ってこんな子だった。 「やるからには本気で! 」  そう言って、次に出した紙には、この喫茶店で出会うシナリオが書かれていた。それを受け取って、読んだ。  そうだった。そうだった。春香って……こんな子だった。
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