2190人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにしてもさぁ、春香の甘い香りが、常に柊晴からしてたよ」
今日は、喫茶店の珈琲の香りを邪魔しない為にか春香から甘い香りはしなかった。
「あれね、廃盤になったし、ちょうど使い切ったんだ。……香りは、今は……ちょっと」
そう言うと、赤くなって俯いた。左手をそっと、下腹に当てている。
「え! 春香……」
「うん」
「おめでとう! 京也くんも、おめでとう! 」
「うわぁ、嬉しいもんだな」
「ああ。そうだな」
京也くんも、嬉しそうに微笑んだ。この二人がパパとママになるなんて。この二人も、話し合って、解決したのかな?
そう思っていたら
「香水、つけなくなって嬉しい」
京也くんが、ぼそり言った。
「え、何で!? 京也くんがあの匂い好きだって言うからつけてたのに! 」
春香が言い返す。少しばかり空気が変わった。
「……俺が? まぁ、嫌いではないけど。いつ? 」
「初めて柊晴くんと、ここへ来た時。甘くていい匂いだねって……」
「ああ、ただの営業トークだよ。いちいち覚えてない」
そう言った京也くんに、春香の顔が強ばった。
「……珈琲の香りを邪魔するからって、ここに、来る日はつけなかっただろ? 」
「まぁ、結構強い匂いだし、急に用事で来る時以外は……」
「俺は、ずっと店だからさ。春香が、店に来てくれる以外は二人の時間があまり取れない。なのに香水つけるんだもんな。今日も……来てくれないのかって、その香りがする度、うんざりしてた」
京也くんの言葉に、春香が真っ赤になった。
「な、何よ。それ……こっちは好きだって言うから……近づきたくなったりするかなって……」
最初のコメントを投稿しよう!