29.次の約束

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「大体ねぇ、この年になると、去年だったか、今年だったか記憶も曖昧になって、思い出せない事多いよね。だから、いいんじゃない? 」 「春香のそんなとこ、羨ましいわ」 「だって、忘れたものは仕方ないでしょ? 代わりに教えてあげるわよ。私が覚えていることは」 「うん、そうね」  いいな、幼なじみって。いいな、共に時を刻んで来た同級生って。 「光、柊晴くんに夢中だったわよ」 「知ってる。今も、だから」 「それから、事故の後、光が無事だって分かったら、ドラマみたいに泣いてわよ」 「おい! 春香! 言うなよ。俺は記憶ないんだから」 「……無いの? 」 「無いんだ。気づいたら、京也の家に連れて帰られてた」 「ほら、ね。記憶が無かったら教えて貰えばいいのよ。代わりに誰かが覚えてる。柊晴くんは、泣き虫だって」 「止めろよ! 春香! 」 「ね、光には柊晴くんが全部教えてくれるわよ。どうせ光の事は、全く忘れずに覚えてるんでしょ? 」 「ああ、勿論」  そう言って、私の腕を掴む。
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