30.再建

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 ──── 「大丈夫なの? 」  今日も定時で帰って来た柊晴に言った。 「いや、上司の俺が、先に帰ってやらねぇと部下が帰れないだろ? 」  如何にもそれっぽい理由に、疑いの眼差しを向けた。 「大丈夫だって、ホワイト企業だし、それに会社もノー残業推進だし……」 「仕事探すわね、私も」 「え、いや、大丈夫だって、本当に」 「んー、でも体調も戻ったし、家にいるのもね。前の会社に戻らせて貰おうかな」 「駄目」 「どうして? 」 「伊東がいるから」 「はっきり言うわね」 「ああ、もう、遠慮はしないからな、好きな事言わせてもらう。俺は嫌だね、あいつ」 「……落ち着いた男性が好きだな」 「……」 「若い子も好きだな」 「……」 「落ち着いた若者……。あれ!? 伊東くん、ぴったりだね」 「光、お前なぁ」 「私も、好きな事を言わせて貰おうかなって」 「……1回くらい……した? 」 「……何を? 」 「あいつと……SE……」 「バッ、バカッ! するわけないでしょ!? 」 「……香水の匂い、あんなに移る? 」  ああ、あの日……バカだな、本当。
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