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柊晴の指先辺りには、あの傷がある。
「髪の毛で上手く隠れてるのかしら」
「なぁに、目立たないよ。……気になるなら俺がずっとこうしてような」
そう言って私の背後に寄り添う。
「歩きにくいわよ、柊晴」
「ん、いいだろ……もう少し、ここで」
「ありがとう、柊晴。あなたがいて……良かった」
「ああ、本当、俺も……そう思うんだ。だけど……そうだな、こんな未来があるなら……もっと早く……」
ほんの少しの時間、柊晴は過去に意識を飛ばし……
「いいか、もう」
そう言って笑った。
「喉渇いたな、飲み物買うか」
自動販売機を見つけた柊晴が
「そこで、待ってて……」
そう言って静止する、数秒。
「……やっぱり一緒に」
私を自分の前に歩かせると、ドリンクのボタンを押した。
「わ、良く冷えてる。頭痛くなっちゃうね」
頭痛くなるというのは、冷た過ぎる事が言いたくて。なのに、心配そうに覗き込む柊晴に……どれ程の心配をかけてきたか。
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